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2010.12.25 密謀
密謀 (上巻) (新潮文庫)密謀 (上巻) (新潮文庫)
(1985/09)
藤沢 周平

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密謀 読了。

ひさしぶりな藤沢周平。
いまさらながら直江兼継モノ。

私の世代の男性は「花の慶次」に登場する直江兼継のイメージが強いのではないだろうか?
私自身にも少なからずそれがある。

内容はやはり石田三成との友情を軸に置き、景勝との信頼感や家康との対立を人物主眼に描いている。
ストーリーに重厚感を持たせるための様々な伏線を持った人物が登場し、さすがに藤沢作品だけあって人間ドラマの描写が素晴らしく、あたかも作中に入っていきそうな錯覚を覚える。
ただし、非常に魅力的な伏線をもった人物が多く登場しているのに、もう少し深く掘り下げて読みたかった。
中身は大長編にも成り得るようなものなのに、非常にあっさりとストーリーが流れていくのが少々残念だった。


ところで戦国期から安土桃山時代というのは、それなりに多くの血が流れた時代ではあるが、日本の歴史上最も日本人が明るかった時代ではないだろうか。
世界史的にも大航海時代という好景気で明るかった時代だといえる。
この時代の日本は南蛮船より海外の利器や文化が輸入され、爛熟期を迎えた室町文化と融合し安土桃山文化へと発展する。
また、鉄製農具が農民の端々にまで行き渡ったことにより多くの農民が飢えから解放された。
農村の余剰生産物は商品経済を発生させ市や座を衰亡させていき、富裕化した農民は市民意識をもち国人一揆を発生させる。結果的にそれらを糾合した一向一揆は日本史上最大ともいえる巨大な組織となる。

ただ、現代と比して決定的に違うのは安土桃山期以前の日本人には倫理観がほとんどない。もしくは現代の我々からすると理解しがたいような倫理観しか持っていなかったのではないだろうか?
広義の意味での「倫理」はもっていても、少なくとも「正義」という語感はなかったように思う。
でなければ、秀吉の天下統一や家康の関ヶ原前夜の権謀術数は成立しがたい。

例えば近ごろの会社経営においてCSRやコンプライアンスだということが多く叫ばれているが、極端ではあるが経済活動のみに焦点をあてるとそれらは足枷以外のなにものでもない。
それらの正義感が著しく欠如していたことがこの時代の明るさの要因のひとつであるとも考えられる。

その時代の中で現代にも通じるような正義感をもっていた人間はかろうじて上杉謙信・石田三成・直江兼継くらいだろうか。
現代人の我々は彼らに大いなる魅力を感じるが、はたして同時代人にはどう映っていたのだろうか。
そんな疑問を思い出させてくれた。
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